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ASUSのN552VXを買った。

カテゴリ:感想文 , 雑談  投稿日:2016/02/26

 あけましておめでとうござる。2月も終わろうとしているのに、今年初めてのブログ記事である。

 諸般の事情でWindowsマシンが必要になり、またメインマシンのMacbook Proもあと少しで5年物になるので、メインマシンを買い替えるつもりでASUSのN552VXを買った。

 実は、当初はEpson DirectのラップトップPCを買うつもりだったのだが、有楽町のビックカメラに置いてある実物を確認した際「ちょっと違うな」と感じて購入を踏みとどまった。ザ・ビジネスノートという具合の外観が好みでなかったこと、タッチパッドの挙動が手になじまなかったこと、液晶の品質がイマイチに感じられたことが主な原因である。こういう買い物は、カタログスペックで大雑把に候補は絞るけれど、最終的には実際の感触が頼りだ。「これいいな」と感じられる物でないと、いくら条件的に見合う製品でも使っていて好きにはなれない。好きになれない道具を使うのは苦痛だ。パートナー選びは、慎重に……というわけで、その後のいろんなお見合いを経て出会ったのがN552VXだった。

 あたりまえの話だが、高性能を求めるのなら、ラップトップPCを買うよりも相対的に安くて選択肢の多いデスクトップPCを買った方がいい。僕はPhotoshopやIllustrator、InDesignといった割と重いアプリケーションをメインに使用するのだから、それなりの性能のマシンが必要になる。それなら、デスクトップ機で作業する方がよっぽどスマートだ。これは一般的にも言われる意見だろうし、僕自身もそう思う。「重い作業はデスクトップ機で」は正しい。でも、それはスペースの都合がつけばの話である。我が家は狭く、デスクトップ機とディスプレイが占有し続けられるほどの余分なスペースが存在しない。だから、デスクトップ機という選択肢が僕にはそもそもないのだ。高性能なマシンが欲しくても、ラップトップPCの中から選択しなければならなかったのである。

 N552VXは、そんなわけでラップトップPCとしては比較的高性能なモデルである。CPUがCore i7だしメモリ16GBもあるしストレージはSSDだしグラボも一応別に積んでるしBlu-rayディスクドライブもついてて、おまけに4K(QFHDとかいうやつ。3840px × 2160px)のディスプレイだ(先に貼ったリンクから飛べる公式ページに「合計8万ピクセル」という表記があるのだが、800万ピクセルの間違いだろう。8294400pixelが正しい数値。400×200ではいまどきのガラケーにも及ばない)。
 価格もそれなりで、実勢では19万弱(税込)といったところ。昨今のPC事情から考えると、そこそこのお値段である。

 さて、3週間ほど使用したので、今のところの感想を書き連ねておく。もっと長く使い込めば自分の感覚も変わっていくだろうから、あくまで現時点での感想である。

 まず、良くないと感じたところから。一番はキーボードだ。テンキーは要らなかった。いや、「この配置でテンキーを置くくらいなら、ない方がましだった」と言えばもっと正確だろうか。公式サイトでキーボードの配列を見てもらえればわかると思うのだけど、矢印キー周りが整然と並びすぎていて、右側のshiftやctrlやbackspaceや矢印が感触で判別できない。そのせいで、せっかく搭載したテンキーもかなり入力しにくくなってしまっている。長時間キーボードで入力作業をするには、少々厳しいレイアウトと言わざるを得ない。
 それから、タッチパッドはMacbook Proのタッチパッドの品質に慣れていると少しクリックしにくく感じる(より強めに押さないとクリックにならない感じ)。とはいえ、カーソルの移動はなめらかで思った通りのところにいくし、クリックの感触については好みの違いもあるだろうので、問題というほどのものではないと思う。それに、作業中はUSB接続のマウスを使うので、ここの品質は僕にとってあまり実務上の影響がない。

 続いて、良かったところ。これは、なにをおいても4Kディスプレイだろう。
 もともと僕はそこまでの画素密度のディスプレイを求めていなかった。作業する上ではフルHD(1920px × 1080px)もあれば十分だと思っていたし、あまり高解像度でもむしろ使いにくいだろうと予想していたからである。
 実際、トータルで言えば、4Kディスプレイはまだちょっと使いにくい。というのは、まだこの解像度にネイティブに対応できているアプリケーションばかりではないからだ。ソフトによってはものすごく小さなウィンドウでメッセージが表示されたり、低解像度でガタガタの文字が滲みながら拡大されて表示されたりする。もしかしたらなにか設定をいじればもう少しましになるのかもしれないけれど、なんにせよまだ誰にでも勧められる環境ではない。
 にも拘らず、このディスプレイはいいものだ。282ppiは、グラフィックを取り扱う人にとっては、たぶん価値ある解像度である。僕は主にイラストを描くためにこのPCを使うのだけど、全体表示でなお細部が把握できると、自分の描いた線がどういう状態なのかよくわかる。「ぼやけてきれいに見えてしまう」ということが減るので、適切な修正を施しやすい。
良い。
(なお、キャリブレーション用の道具を何一つ持っていないので、色の正確性云々について僕は語る術を持たない)

 さて、ここから先は、良かったとか悪かったとかでなく、道具として使い物になるか、という話。

 僕にとって肝心なのは、Adobe CCのアプリケーションがちゃんと動くかどうかである。実は、購入前にネットでN552VXの評判を調べていたときに「Photoshop CCを起動しようとするとブルースクリーン状態に陥る」という話を見つけていた(価格.com内のクチコミ情報)。さらに海外サイト等でよく調べると、GeForceのドライバのバージョン361.43に重大な問題があり、N552VXに限らず同じバージョンのドライバをインストールしているPCでなら同様に発生しうるものらしいという追加情報が得られ、問題が回避できる過去バージョンのドライバもダウンロード出来る様子だったので、不安を抱えながらも購入に踏み切った。
 結論から言えば、ドライバを更新すれば、問題なくPhotoshopを起動できた。現在僕のマシンに入っているドライバのバージョンは361.91だが、PhotoshopもIllustratorも問題なく動いている(ただし、Photoshopは自動認識ではIntel(R) HD Graphics 530が認識されてしまうので、NVIDIAコントロールパネルから個別に使用するGPUを指定する必要がある)。重い作業をするのはIllustratorよりもPhotoshopの方だが、GPU機能がONになっていれば動作はなめらかだ。GPU機能がONになっていないと、おそらく表示解像度が高いせいだと思うが、PhotoshopもIllustratorもスクロール等の動作にもたつきがある。
 ついでにInDesign。こちらは、動作に支障はないが、一部ウィンドウ表示に不具合が見られた。おそらく、4Kディスプレイに対応するためのアップスケーリング処理にうまく働いていない部分があるのだろう。使えないレベルの問題ではないので、現状では深追いはしないことにする。
→この感想文を書いている間に来ていたInDesignの更新を適用したら、変だったところが解消されていた。
なお、現行のInDesignはGPUを使ってパフォーマンスを向上させる機能が搭載されていないらしいが、動作にもたつきは感じない。

 ということで、僕がよく使う3つのアプリケーションは、問題なく使用できた。動作の軽快さは扱うデータの重さに大きく左右されるものなので一概には言えないのだけど、スペック不足ということは、ないと思う。搭載されているOSがWindows10なのは不安だったけれど、予想していたよりも使いやすい。

 以下、そのほかに不都合を感じたところをいくつか。

●数秒のあいだ動作が固まる問題。復帰後に「ディスプレイドライバーIntel Graphics Accelerator Drivers for Windows8(R)が応答を停止しましたが、正常に回復しました。」というアラートが表示される。
→初期状態でインストールされているIntel(R) HD Graphics 530用のドライバーが古いことが原因と思われた(なぜ「for Windows8(R)」なんだ?)ので、バージョン20.19.15.4331に更新してみた。経過観察中。
●システムフォントが中国語フォントっぽい(日本語の漢字と形状が異なるものがちらほら見られる)問題(たぶんOS由来の問題)
→2月20日ごろにきたWindows10のアップデート時にフォントが更新されたのか、漢字の形状が日本語フォントっぽくなった。解決……か?
●暗い画面を表示するとディスプレイが勝手に暗くなる問題
→不具合ではなく、輝度自動調節機能によるもの。ディスプレイの輝度自動調節機能は2種類あるようだ。一つは環境光を検知して調節するもの、もう一つは「バッテリー駆動時に」省エネルギー動作のために表示するものの明るさに応じてディスプレイの輝度を調節するもの。グラフィックス・プロパティの〔電源〕→〔バッテリー駆動〕設定から、〔ディスプレイ省電テクノロジー〕を無効にすれば発生しなくなる。解決。

 総評:使っていて楽しいです。いいマシンだと思います。

2017年1月16日追記

外部ディスプレイ出力について

 N552VXには外部ディスプレイへの出力端子(Mini DisplayportとHDMI)がついている。
 しかしながら、これらについてカタログにバージョン等の記載もなく「4Kでの外部出力が可能」とだけ書かれており4Kで60Hz出力が可能なのかが不明だった(Mini Displayportの端子のところのロゴに「++」がついてたから1.2以降のバージョンだとは思ったのだけど、規格に詳しくないので確信が持てなかった)。
 その手の情報をネットで検索しても見つからず、どうしたものかと思っていたのだが、人柱になる覚悟で(そしてもし30Hzでしか出力できなくても、作業できないレベルではないと信じて)4Kディスプレイを購入し接続したところ、Mini Displayportは4K60Hzの出力が可能だった。HDMIのほうは30Hzしか出力できないようだ。
 ただし、世の中にはMini DisplayportをHDMI接続に変換できるコネクタが存在しており、これを使うとHDMI接続でも4K60Hzの出力が実現できた(僕が買ったのはこれ)。HDMIしか端子のない4Kディスプレイに接続するときとか、別の機器でDisplayportが埋まってるディスプレイを共有するときにはこれで対応できる。もちろんディスプレイ側がHDMI2.0に対応してないとだめだけど。



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“ASUSのN552VXを買った。” への2件のフィードバック

  1. ののじ より:

    はじめまして、こんにちは。この記事でレビューを書いておられる機種の購入を考えている者です。色々評判を検索していてたどり着きました。
    イラストを描かれるということでお尋ねしたいのですが、こちらの機種の液晶でイラスト等を見たとき、黒が鈍い、全体的に色が薄い、白っぽいと感じられることはありますか? といいますのも、本日ヨドバシカメラで実機を見てきたのですが、ウェブページを表示したところ、本来黒と思われる文字がグレーに見えてしまいまして、購入を一旦見送ってきた次第なのです。カタログスペックとしては自分の作業(私もイラストを描きます。使用目的もAdobe御三家ソフトで、ほぼ同じです)には十分と期待していたのですが。
    あまり色の薄い液晶ですと、イラストをモニタで見て良い塩梅でも、プリンタで出力すると真っ黒に潰れるということになるのではと心配しています。実際に使っておられて、そのように思われることはありますか? 突然で失礼いたしますが、もし不都合ございませんでしたら、お答えいただければ幸いです。

    • 皮算積人 より:

      ののじさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

      お尋ねの件に回答いたしますが、最初に、私はこのPCのディスプレイに対してキャリブレーションを行わず、購入時のデフォルトのまま新たにカラープロファイル等を作成することなく使用している、ということを申し添えておきます。その点ご了承の上でお読みください。

      あくまで当方の感覚ではありますが、今のところ色味の薄さを感じたことはありません。
      ただこのマシンが搭載しているのはノングレアの液晶ディスプレイで、「グレアに比べてノングレアの液晶は全体に白みがかって見える」という一般論と同様、黒の暗さはグレアに劣ります。もしののじさんが普段ノングレアの液晶を使用されていらっしゃらないのであれば、おそらくはグレアタイプの液晶との比較で薄く、白みがかって見えているものと思われます。(私は普段の仕事でノングレアの液晶を使用しておりますので、この「白みがかった黒」に目が慣れているということはあると思います)

      もっとも、懸念されているモニタとプリンタ出力時の違いについては、ご使用のプリンタの色再現能力にも左右されるところですので、実際のところわかりません。
      プリンタによっては、例えばブラックインキが85%を超えるとほとんど色の階調差を表現することができなくなるものもあります(家庭用だけでなく、印刷会社で校正紙を出力するために使用しているプロ用の機械でも、同様です。個人的には、プリンタは総じて暗いところの色再現力が弱い、と感じます。プリンタで暗い領域がつぶれていたデータをオフセット印刷にかけると、十分に階調表現ができている、ということも多々あります)。

      なお、暗い部分の階調が本来あるべきレベルを超えて見えやすく表現される、ということを、このPCのディスプレイでは感じたことはありません。ただ、これはディスプレイに適用するカラープロファイルによっても変化することですので、やはり一概には言えない部分があります。
      (計測する機械があれば、色再現力の程度についても評価できるのですが、当方にはその機材がなく、はっきりとしたことが言えず、申し訳ありません)

      最後にざっくりとした感想を述べますと、一般的なディスプレイとして、悪い表示はしていないと思います。普通のディスプレイとしては問題のないレベルです。ただ、ハードウェアキャリブレーション機能などはついていないようなので、カラーマネジメント向きのディスプレイではないと思います。

      これで回答になりましたでしょうか。なにかしらお役にたてれば幸甚です。

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