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きっかけは、何気ない呟きだった

これまでただの一度も異性と交わらなかった清純派男子、加藤椎作。彼は、自分で買ってきたケーキを目の前に、深いため息をついた。

今日は、彼の三十回目の誕生日。祝ってくれる友も恋人もいない。自分を励まそうと買ったはずの誕生日ケーキが、むしろ恨めしかった。

ふと、部屋に置かれた鏡に目が行った。そこには、すでにくたびれた中年男が一人映し出されていた。元々不細工だったけれど、年を重ねるとより一層、醜さに拍車がかかる気がした。だから、かれは思わず呟いてしまった。

「時よ止まれ。僕は、醜い……」

何気ない呟きだった。けれども、それは彼が予想しない出来事を引き起こした。

――それは、悪魔を召喚する呪文だったのだ。

美少女への転身――彼が魔法使いであるが故に

彼の目の前に現れたのは、「ゆうりん」と名乗る、悪魔の少女だった。彼女は彼に言う。

「あんた、ブッサイクだねぇ。なにそれ、趣味でやってんの?」

悪魔の言葉に彼は激高する。

「僕だって、こ、こんな顔で生まれたかったわけじゃないよ! 昔っからそうだ! 女どもは僕の顔見ては『ジャガイモくん』なんて呼びやがって! ちくしょう、他人を傷つけて平気な面して、なにがオシャレ泥棒だ! お前らなんてうんこ踏んじまえ! ふざけんな!」

怒りに我を忘れる彼に対し、悪魔は言った。

「あんた魔法使いなんだからイケメンになりゃいいじゃん。馬鹿なの?」

悪魔は彼に「イメンケ」という美男子に変身できる魔法を教えた。自分自身の使った魔法で美男子の姿に変わり驚愕する彼であったが、その事実を受け入れると、悪魔に尋ねた。

「つかぬ事を伺いますが……美少女になれる魔法ってありませんか」

「ああ、簡単よ。顔に手をかざして『ショジョビー』って唱えてごらんなさい」

彼は叫んだ。「ショジョビー!」と。そして、それから数分後、彼が世界一美しいと考える美少女が、鏡に映し出されていた。

魔王軍への招待と女子校への潜入

悪魔ゆうりんに誘われて、加藤椎作は魔王軍へと就職する。彼に与えられた任務は聖少女と呼ばれる存在を見つけること。そのために、彼は「ダレイオス女学院」という女子校へと潜入するのだった。そこで彼を待ち受けているものは――


「魔法中年っ!」

シリーズ第一弾。
全てはここから始まった。

「子連れ中年っ!」

シリーズ第二弾。
幼い悪魔を預かることになった玉子に、新たな事件が降り掛かる。

「純情悪魔っ?」

シリーズ外伝。
悪魔「ゆうりん」にスポットを当てた、胸のキュンキュンが止まらなくなる恋愛小説。健全。