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同人誌、電子版と紙版の価格差について

カテゴリ:雑談  投稿日:2015/08/20

 Kindleで販売中の電子書籍を、紙の同人誌にもしてまたイベント出たいなあ、という欲求が募っている。作る事自体には特に問題はなく、組んで印刷所にお願いすればいいのだけど……問題はイベントでの頒布価格である。

 さて、「魔法中年っ!(シリーズ)」を文庫本で作るとして、ある程度の可読性を保ちつつもちょっときつめの設定で試しにざっと組んだところ、第一巻は208ページになった(奥付含む)。きちんと手を入れても、200ページ強というのは変わらないだろう。10万字以上だと、どうしてもそれなりのページ数が必要になる。
 ポプルスさんでそのページ数の文庫本を作ると、たとえば30部では31,060円(税別)になる。もうちょいお安いコミックモールさんとかもあるけれど、カバーにPP加工までしてくれてこの値段なのは、すでにかなり安い。20,000円を切るところはまずない、と思う。

 さて、これをいくらで頒布するのよ? という話である。

 同人誌ってページ数に比してお高いものが多いけれど(薄い本とよくいわれますね)、そこは個人制作という都合上、少部数のものも多いので単価が上がるのは致し方ない。それを許容する文化は同人の世界にはある……と思う、がしかし、じゃあ仮に値段関係なしに買ってくれる人がいたとして、「魔法中年っ!」を1,000円で頒布するのは道義的にどうなのだろう。Kindleでは99円、二巻の基準でも299円で出している本を、同じ内容で紙の本では1,000円って、ちょっともやもやするものがある。印刷代がかかるので、と上乗せするにしても、許容されるのは200〜300円程度じゃないだろか。とすると、500円〜600円程度がせいぜい、というところだと思う。
 しかし、一冊だすごとに万単位の赤字を前提にしないと活動できないっていうのは、正直辛いんだよなあ。500円〜600円が(納得感として)限界、と思っても、それを実行するにはちょっと勇気が要る(以前「夢入り娘」を出したときは、1部あたり1,300円で制作したものを500円で頒布したんだけど)。
 電子書籍でもコストはかかるよ、という話は全くその通りなんだけど、こと同人作家にとって紙の本を出すのと電子書籍を出すのとでは、作品を書く以外のところでの持ち出しがあるかないかの違いがあるわけで、その差は心意気でどうこうできるレベルを超えてでかいと思う。そしてそれは継続して活動するほどにより大きくなる。電子書籍は、何冊出しても、いくら安くしても、懐が全然いたまないんだもの。

 読者には電子書籍も紙も関係ない、作品の中身の価値に合わせて値段を付けるべきなのだから、内容が同じなら紙も電子も同じ価格にすべき、という理屈が一番美しくて正しいのかもしれない。だけど、やっぱり紙の方が僕にかかるコストは圧倒的に大きいわけで、それを無視して完全に同じ価格にするのは石油王ではない僕にはできない。電子書籍の方をいまより高くして合わせるというのも、ちょっと違うと思うし。紙の本を作るという事情によって電書の値段が上がるって、電書ユーザからしたら「なんじゃそりゃ」でしょ。そもそも、自分の作品の価値を金銭で表現するといくらなのか、なんて知り得ぬし。各読者が作品を読みとるという運動の中にしか発生し得ぬ価値を一つには定め得ぬし。

 ていうか、実際には電子と紙との整合性が云々関係なしに、1,000円で僕の本を買ってくれる人なんていないだろうからどっちにしろ1,000円なんて値段はつけられないんだけど。

 そういうわけで、とりとめもなく、色々と悩んでいる。

 なお、A5版2段組とかそういう形でコストを抑えるという選択肢は僕にはない。僕が作りたいのは文庫本なのである。



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