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ラスター画像とベクター画像の違い

カテゴリ:同人印刷  投稿日:2013/01/07

同人誌製作を志す方と、DTP初心者の方は知っておいた方がいいと思われる「画像形式」について、今回は私なりに解説していきたいと思いまする。

画像形式には色々ありますが、大きく分けると「ラスター画像」と「ベクター画像」に分類されます。

ラスター画像とは

人によっては「ビットマップ画像」と呼ぶこともあります。Pixel(ピクセル)と呼ばれる点が縦横に並ぶことで、画像を表現しています。一般的に良く見られるのは、写真データだと思います。拡張子で言えば、jpg、png、gif、bmp、tifなどが有名です。

ベクター画像とは

ラスターが点の羅列であるのに対して、ベクターは線と面で描かれる画像形式であるとよく言われます。その実体は、描画命令の集まり(≒計算式)であると言えます。
例えば、SVGというベクター画像形式をテキストエディタで開くと、 次の様な記述があります
<line fill=”#FFFFFF” stroke=”#000000″ x1=”0.176″ y1=”0.468″ x2=”227.886″ y2=”86.01″/>
これは、適当に真っすぐな線を引いただけのベクター画像データに含まれる記述です。私自身、データの実際の記述に詳しいわけではありませんが、 すぐに想像がつきますよね。fillは塗り(面)、strokeは線、指定されている16進数の値は色です。x1、y1は始点の座標、x2、y2は終点の座標でしょう。つまり、これがベクター画像の正体、描画命令というわけです。

さて、ラスター画像の見本を載せたのにベクター画像の見本を載せなかったのには、理由があります。実は、ここで私がどんな画像を提示しても、それは紛れもない「ラスター画像」であるからです。「世の中にはベクター画像というものがあって、DTPの仕事では毎日のように取り扱っているのに」と思う方もいらっしゃるかも知れません。

例えば、次の画像は、ベクター画像を作成する「Adobe Illustrator」をキャプチャしたものです。実際に、ベクター画像を作成している画面です。

イラストレータで作成

クリックで拡大

しかしこれも、ラスター画像なんです。

分かっている方には当たり前すぎる話かもしれませんが、私たちが普通のパソコンで見ている画面は、全て「ラスター画像」です。なぜならば、ディスプレイが「Pixel」を表示することしか出来ないからです。ディスプレイの解像度は年々上がっていて、一昔前だと1024*768(pixel)が一般的だったのが、最近はワイドで1920*1080(pixel)が多いのでしょうか。時代は進んでも、単位はpixelのまま変わりません。パソコンのディスプレイは「pixel」を表示する為に作られているのです。

ベクター画像は、そのままですと、先ほどの「<line fill=”#FFFFFF” stroke=”#000000″ x1=”0.176″ y1=”0.468″ x2=”227.886″ y2=”86.01″/>」の様な式でしかありません。それをディスプレイに表示するために、パソコンは常に「ラスタライズ」という作業をしています。ラスタライズとは、「ラスターにする」ことです。 パソコンがラスタライズしてくれなければ、ベクター画像は影も形もありません。もちろん画面表示だけでなく、印刷する時にも必ずラスタライズの工程が入ります。ディスプレイにしろプリンターにしろ、ドライバーが自動的に処理してくれるので、一般ユーザがそれを意識することはほとんどありません。

取り扱い上の注意点

どちらかと言えば運用が楽なのはラスター画像ですが、ラスターにはラスターなりの注意が必要です。

まず、解像度。ラスター画像は点の情報であり、「再計算することでより詳細な情報が得られる」なんてことはありません。画像がどの程度の解像度を持っているのかは常に注意が必要です。一般に印刷に適した解像度は、カラーで350ppi、グレーで600ppi、2値(白黒)で1200ppiと言われています。(印刷解像度についての過去記事はこちら

二つ目には、pixelの形状です。pixelの情報は点の情報であり、中には色の数値が保存されていますが、その点は必ずしも正方形として取り扱われるわけではありません。パソコンの画面は正方形pixelを前提としていますし、一般的な画像形式もほとんど正方形pixelを前提としていますが、たまに長方形のpixelとして運用することを前提としているデータがあります。そういったデータを正方形pixelとして読み込むと、縦横比が変わってしまいます(今はどうか知りませんが、少なくともアナログ時代のテレビ放送は、長方形pixelを前提としたものでした)。

ベクターには、解像度やピクセルの縦横比と言った心配はほとんど関係ありません。ベクターを印刷する時は、常に最適な解像度でラスタライズされることになっています(これがベクター画像の最大の利点と言ってもいいでしょう)し、先ほどの「<line fill=”#FFFFFF” stroke=”#000000″ x1=”0.176″ y1=”0.468″ x2=”227.886″ y2=”86.01″/>」は縦横軸の単位が同じ座標の上で指定されているものですから、読み込み方のせいで縦横比が変わるということは考えにくいことです(といっても、.aiのファイルをInDesignに貼って、それの縦横比を自由に変えることも出来るので、全く心配ないということでもありませんが)。

ベクター画像の注意点は、それが常に「再計算され、再描画されるデータである」という事に起因しています。それは、「思いもかけない再現になる可能性がある」という事です。複雑な形状が多数あり、それに複雑な効果が適用されているとき、画面で見ているものと実際に印刷されるものが、全くかけ離れたものになる可能性すらあります。そういう問題は言ってみれば処理上のバグなのですが、ラスター画像ではあまり出会わない現象に出会うのもベクター画像ならではで、確実な回避方法はありません。私が仕事上で出会ったトラブルで、ベクター画像で白に指定した部分が、印刷上で緑に変わってしまったというものがありました。カラーマネジメント云々のレベルではなくて、全く違う色として処理されてしまったのです(その時はそのオブジェクトをラスター画像に置き換えることで回避されましたが……)。便利なベクター画像ですが、そういう事例もあります、ということ。

どちらもメリット・デメリットがあります。十分に理解して使いましょう。



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