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InDesignを持て余している人のための同人小説組版・第五回「段落スタイル」

カテゴリ:同人印刷  投稿日:2012/12/29

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前回まででマスター設定は一段落しました。ここからは、本文の組に入っていきます。

とりあえずテキストを流す

本文組は、通常のページで行います。まずはページウィンドウから1ページ目を選択。
縦組みグリッドツールで版面に合わせてフレームグリッドを作成、そこに小説のテキストをコピペします。

左下に赤い四角が見えますね。これはボックス内にテキストが収まっていない「オーバーセットテキスト」と呼ばれる状態を示しています。InDesignでテキストを入力する為にはボックスを作る必要があると以前に書きました。ですから、ボックスが無いとこの先のテキストは隠れたままです。

幸いなことに、InDesignにはこの先のフレームグリッドを自動で作って、はみ出たテキストを流し込んでくれるという機能があります。とりあえず、新規ページを作成して2ページ目を作成しましょう。

次に、先ほどのオーバーセットテキスト状態を示している赤い四角をクリックします。マウスカーソルの形が変わったと思います。この状態でどこかをクリックすると自動的にフレームグリッドが作られ、溢れたテキストが流れていきます。ですが、ただクリックするだけだと一ページ分のフレームグリッドが出来るだけで、やはりその先ははみ出てしまいます。

そこで、自動的にフレームグリッドが作られる前の状態(カーソルが変わっている状態)に戻り(Ctrl+ZのUndoで戻れます)、今度はShiftを押しながら、流し込み始めたいところ(ここでは2ページ目の版面右上)をクリックしてください。自動流し込みが始まり、テキストの終わりまでページとフレームグリッドを自動作成してくれます。

流し込み

長いテキストだと時間がかかるので少し待ちましょう。

増えたページ

流し終わると、ページが増えています。

注意:InDesignが自動で流し込んだページは版面とフレームグリッドが完全にマッチするように流れているはずですが、一番最初の流し込みを始めたページ(ここでは2ページ)のボックスは、クリックした場所によって位置がずれてしまう可能性があります。必ず確認しましょう。

ずれ

こんな風になっていたらずれています。ボックスのサイズ、位置をきちんと整えましょう。

段落スタイルを設定する

ここからは段落スタイルを設定していきます。

段落スタイルというのは、段落に設定できる体裁設定集のようなもので、スタイルを作成してそれを適用すると、適用された段落は全て同じ体裁になります。例えば、一般的な地の文の体裁である先頭行一字下げを設定したスタイルを作っておけば、全ての地の文の体裁を楽に統一できます。

段落スタイルを作る時は多少の計画性が必要です。小説程度であればほとんど気にすることはありませんが、どのようなスタイルが作られているか管理できなくなると、全体の体裁が把握できなくなってしまいます。ここでは、全ての基準となるスタイル「base」を作り、そこから派生して「本文」「台詞」というスタイルをそれぞれ作っていくこととします。また、約物(というかカギ括弧、括弧の処理)については色々なパターンがあるため、次の様な方針でいきます。

1.台詞段落の最初のカギ括弧、括弧は全角分のスペースを確保する
2.文の途中で出てくるカギ括弧、括弧は半角分のスペースを確保する(天ツキにする)

以上の方針は、手元の小説本を参考にした方針です。具体的には次の様な画になります。

方針

 

段落スタイルのウィンドウを使用しましょう。画面上に表示されていない場合は、例によってメニューの「ウィンドウ」から「段落スタイル」を選んでください。そして、段落スタイルのメニューから「新規段落スタイル」を選びます。

段落スタイル

「基本文字形式」を左のリストから選んで、「フォント」「スタイル」「サイズ」を指定します。「フォント」と「スタイル」は文字の形を決めるものですので、自分の好きなものを選択しましょう。サイズは、版面設計で設定したサイズと同じサイズを指定します。

こんな感じ

こんな感じ

行送りも版面と同じ値を設定するとより良いですが、フレームグリッドを使っているだけであれば初期状態で問題ありませんので、とりあえずこのまま。
次にぶら下げ設定。小説は一般的に、行末の句点や読点をぶら下げる設定で組まれていることが多い様ですので、ぶら下げを許可する設定をします。

ぶらさげ

左のリストから日本語文字組版を選択、ぶら下がり方法を「標準」に変更します。そして、スタイル名を「base」とし、「OK」を押します。

そこまで出来たら、とりあえず全てのテキストを選択(フレームグリッド内のテキストが編集できる状態でCtrl+Aを押せば全選択できます)して、段落スタイルのウィンドウから「base」を選択すると段落スタイルが適用されることになります。

さて、次に地の文のスタイルを作ります。「base」が指定されている段落にカーソルがある状態で「新規段落スタイル」を選択します。

基準に注目

スタイル名は「本文」

「基準」の項目が「base」となっていることに注目してください。基準というのは、あるスタイルから派生したスタイルを作る時に便利な機能で、元となったスタイルと常に繋がった状態になります。ここでは便宜的に元となったスタイルを「親スタイル」と呼び、派生したスタイルを「子スタイル」と呼ぶことにします。基準が設定されている子スタイルは、親スタイルの設定が変わると、その設定を参照して自動で変わります。例えば、ここでフォントを変更したいと思った時には、「base」のフォント情報を変更すれば、「本文」のフォントも同時に変わるということです。「本文」と「台詞」の二つのスタイルでフォント情報を共有する予定なので、今回はこの手法をとっています。

(また、余談ですが、インデントの実装についてどのような手法を採るべきかについての私の意見を別記事にまとめました。読む必要はないですが、読んで「ふ~ん」ぐらいに思っていただけると幸いです)

さて、「本文」に設定すべきなのは先頭行のインデントです。普通、小説の地の文は先頭行が一字下がっていますが、頭にスペースを入れるのではなくて、スタイルで設定しておきましょう。頭にスペースが入っている場合は、予め削除しておいてください。

インデント設定

左のリストの「インデントとスペース」を選択して、「一行目インデント」に一文字分の値を入力します。単位がmmになっていますが、入力する際に「12Q」や「8pt」のように、自分で単位を指定して入力すると、自動で換算されます。これで地の文のスタイルは完成です。

次に台詞。台詞は先頭行一字下げをしませんが、「base」スタイルでは不都合があります。というのは、先ほど示した方針の1に抵触するからです。InDesignでデフォルト設定されている文字組の「行末約物半角」という設定では、普通、行頭の括弧、カギ括弧は半角分のサイズしか持ちません。

(文字組の説明や設定の仕方については長くなりそうなので、後日別枠で解説を用意したいと思います。最適な文字組設定というわけではありませんが、特に大きい問題もありませんので、ここでは「行末約物半角」で作業を進めるものとします。ちなみに、禁則は強い禁則でも弱い禁則でも構いませんが、私はいつも強い禁則で作ってます。小説本では弱い禁則の方が多いという話も聞きますので、こちらもお好みで良いかと思います。私の手元の小説本では行頭に促音便が来てましたので、弱い禁則なのでしょう。なにも特別設定しなければ、InDesignでは強い禁則になっていると思います)

行頭のカギ括弧が半角サイズになるということは、半角分アキを作れば良いわけです。ということで、「本文」スタイルで設定した「一行目インデント」の値の半分を、「台詞」スタイルの「一行目インデント」に設定しましょう。

これで、本文スタイルと台詞スタイルが一応完成ということになります。これを全文に適用することになりますが、検索・置換機能を使えばほとんど一発で台詞と本文に適したスタイルを適用できます。疲れて来たのでその詳細は次回に。

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